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アパート経営における適正なアパート建築費はどれぐらい?

アパート経営をお考えの方に、賃貸アパートの適正な建築費を割り出すための方法や、建築費を算出するのに必要な建築構造に関する知識、坪単価の相場について解説します。アパート建築後の利回りの計算方法についてもご紹介します。アパートを建築する際には、どんな住人に住んでもらうかを想定することが大切です。

 

■適正なアパート建築費を割り出すには、まず構想を練ろう

アパートには、「木造(W造)」「鉄骨造(S造)」「鉄筋コンクリート造(RC造)」といった構造があり、どんな構造を選ぶかによって坪単価が違ってきます。坪単価とは、建物を建てる際、1坪(約3.3㎡)あたりにどれくらいのお金がかかるのかを表す数値のことです。

また、床・壁の素材や、トイレ・キッチン設備をどの程度のグレードにするか、といった点によっても、かかる費用は異なってきます。そのため、まずは、「自分はどんなアパートが建てたいのか」「その地域や、予想される借主のニーズに合ったアパートはどんなものか」を、ざっくりとでも構想してから、その案に沿ったアパートを建てる費用を概算してみることをお勧めします。

いろいろとこだわった結果、当初想定していた建築費よりかなり高額になってしまった場合は、案の修正を検討してみましょう。

※アパートとマンションの違いとは?

アパートとマンションには明確な法律上の定義や用法上の定義は無く、おおむね小規模の低層建物をアパート、大規模で中高層であればマンションと呼んでいます。

 

■アパート建築費の出し方

アパートを建築するおおよその費用を算出するには、「坪単価×延床面積」で計算します。仮に、鉄筋造で、各階が50坪で2階建てのアパートを建築するとします。鉄筋造りの坪単価が70万円だとすると、50坪×2で100坪なので、建築費用は7,000万円となります。

この建設費は建物の本体の工事費のため、実際には、外構や地盤改良のための工事、電気・水道・ガスの工事、税金などで、さらに3割ほど加算されると見積もっておきましょう。つまり、建築費用7,000万円のアパートならば、合計で9,100万円ほどの費用がかかります。

 

■代表的なアパートの構造3種類と、坪単価の相場

アパートやマンションの構造には、主に以下に紹介する3つがあり、それぞれにメリット・デメリットがあります。長短や坪単価を踏まえたうえで建物構造を選びましょう。

もっとも、以下にあげる長所・短所はあくまで一般的なもので、最近では技術革新により、耐火性に優れた木造なども存在します。目安として参考にして下さい。

 


 <木造(WoodW造)>【相場…一坪あたり40万円~60万円】

日本で古くから使用されている建物構造で、現在も主に2~3階程度の小規模アパートでよく使用されています。メリットは、坪単価が安く建築費用を抑えられること。間取りの自由度も高く、変形した土地を活用してアパートを建てる際にも向いています。また、通気性が高く、木材は湿気の多い梅雨時には湿気を吸収し、乾燥した冬は湿気を放出する役割があり、日本の環境に適応した住居を提供できます。

デメリットとしては、耐火性が低い点があります。また、通気性がよい分冷暖房の効きが悪く、遮音性が低い点が挙げられます。特に、近所に消防署や空港など、大きな音を出す施設がある場合などは、木造でよいか慎重に検討する必要があります。

 


<鉄骨造(Steel S造)>【相場…一坪あたり50万円~80万円】

柱や梁などといった建物の骨格に、強度を高めた鉄骨を使用しています。コンクリートを使わないため軽量化でしなやか。反面、地震の揺れが大きくなります。工場で建築資材を作っておき、現場で組み立てることが多いため、工事期間が短くて済みます。6mm未満の「軽量鉄骨造」と、鋼材の厚さが6mm以上の「重量鉄骨造」の2種類があり、軽量鉄骨造は住宅や2~4階建の小規模アパート、重量鉄骨構造は低層から中高層のビルやマンションなどに使用されることが多くあります。

デメリットとしては、コンクリートを使うRC造に比べて耐火性や防音性が低いこと。一方で、比較的コストは小さく、耐震性を維持しながら建築費を抑えたい場合に向いています。

 


<鉄筋コンクリート造(Reinforced ConcreteRC造)>【相場…一坪あたり70万円~100万円】

鉄筋とコンクリートを組み合わせることで、マンション建設に求められる強度や特性を備えることに成功した構造です。鉄筋は引張力(引っ張る力)には強いものの、熱に弱い・錆びやすいといった短所があります。そこで、鉄筋を熱に強いコンクリートで覆うことで、熱から守ると同時にさびつきを防ぎます。また、コンクリートは引張力が弱い素材なので、この点を鉄筋が補います。耐火性と防音性に優れ、また地震に強い、耐久性の高い構造です。低層マンションから中高層マンションまで幅広く利用されています。屈強な構造のため、広い空間や開口部を作ることができ、店舗やオフィスの入ったマンションにも向いています。

デメリットとしては、坪単価が高いため建築費用が高く、また頑丈な分解体費用も高額になります。コンクリートも鉄筋もどちらも重いため、建てる土地によっては地盤の強化が必要になり、その分コストがかさみます。頑丈さを優先したいアパートに最適です。

 

代表的な3つの構造の坪単価及び長短をまとめると、以下のようになります。

 

以上が、一般的なアパート建設に用いられることが多い構造、及び坪単価の相場ですが、ほかにも以下のような構造があります。

 


 <鉄筋鉄骨コンクリート造(Steel Reinforced ConcreteSRC造)>

高層マンションに多く採用されている構造です。耐震性、耐火性において、建築に使われる様々な構造のうちでもっとも優れています。火事・地震に対し鉄壁の構造を誇り、安心を買うならばSRC造ですが、その分建築費も高額になります。

 


<鉄骨軽量気泡コンクリート(Autoclaved Lightweight aerated ConcreteALC造)>

基本は鉄骨造ですが、外壁などにALC(軽量気泡コンクリート)を使用した構造です。耐火性、強度、遮音性に優れ、住宅や賃貸マンションにも使われるようになってきています。

 


<壁式鉄筋コンクリート(Wall Reinforced ConcreteWRC造)>

WRC造とは、梁や柱がなく、梁に相当する配筋が壁に仕込まれている鉄筋コンクリート構造です。地震による振動を吸収しやすいため、東日本大震災以後、使われるようになってきています。

 


< RS造(Reinforced Steel>

建物の下位部分は鉄骨コンクリートで造り、上位部分を鉄骨造など、下位と異なる構造で構成されています。上層階と下層階で遮音性に違いがあり、設計の自由度が高いのが特徴です。中低層のデザイナーズマンションなどで使われることがあります。

 

■建物構造はどんな層をターゲットにしているかで選ぼう

アパート経営で大事なのは、どんな層に住んでもらいたいか、どんな人ならば部屋を借りるだろうか、ということを念頭に置きながら構造を考えることです。アパートを経営する際には、常に空き室がないように気を配る必要があります。アパートを構想する段階で、どんな住人に住んでもらうかをあらかじめ想定することにより、間取りや広さ、家賃を適正なものにすることができ、安定した家賃収入に繋がります。

 

たとえば、一人暮らしで外出が多く、アパートには夜に帰って寝るだけ、という借主を想定するならば、家賃を低くおさえられる木造が適しています。子供がいて騒ぐ可能性がある家族向けを想定するならば、RC構造が適しています。また、断熱性に優れており冷暖房効率がいいRC構造は、1階にオフィスやテナントを入れたり、長時間部屋の中に住人がいることを想定したアパートに向いています。

 

■構造別・建物の法定耐用年数について

不動産投資においては、法定耐用年数が長いほど、銀行から融資を受ける際に有利となります。アパート経営は数十年にわたる長い事業です。将来、アパートを売却することもお考えならば、法定耐用年数が長いアパートを建てることをお勧めします。

 

・賃貸用住宅の法定耐用年数

木造…22年

鉄骨造…34年

RC造…47年

銀行から融資を受ける際、法定耐用年数を過ぎないように借入年数を決めます。つまり、築5年の場合、木造ならば17年、鉄骨造あれば29年、RC造であれば42年まで借りることができます。

 

■建物の大きさの制限に注意

建物を建てる際には、法律により「建ぺい率」と「容積率」による制限があることも覚えておきましょう。アパート建築予定の土地の建ぺい率と容積率を調べておき、どのくらいの規模のアパートが建てられるかを概算してみましょう。

・建ぺい率

簡単に言うと、真上から見た際の、土地の面積における建物の面積が何%くらい占めているかという割合のことです。

建ぺい率(%)=建築面積÷敷地面積×100

せっかくの土地なので、ぎりぎりまで建物を建てて有効活用したいものですが、防災や日照・風通しなどの意味で望ましくないため、法律により一定の制限がかけられています。

建ぺい率は地域により異なりますが、目安としては、都心の駅付近であれば80%、その他の土地では60%以下となっています。

・容積率

容積率は、建物の延床面積にかけられる制限で、法律によって地域ごとに細かく定められています。

容積率(%)=延べ床面積÷敷地面積×100

 

■アパート建築費の概算がわかったら、利回りも計算してみよう

適正な建築費を割り出すためには、自分が建てたいアパートの建築費の概算を出すともに、どのくらいの利回りが発生するかも合わせて試算してみると良いでしよう。

利回りとは、投入した費用に対し、一定期間でどの程度の利益が返ってくるかを示す指標です。通常は、1年間の利回りである年間利回りのことをいいます。例えば、8,000万円かけて建てたアパートが、1年間で800万円の利益を出したとすると、利回りは10%となります。

 (年間の利益)800万円÷(費用)8,000万円=(年間利回り)10%

 なお、利回りの出し方には3種類があります。

 ・表面利回り

先ほどご紹介した式の通りに、年間の利益をアパート購入費用で割った数値です。ざっと概算をするのには向いていますが、もう少し正確なデータを知りたい場合は、以下の実質利回りで計算します。

・実質利回り

表面利回りに、固定資産税、保険料、修繕費用と言った年間支出を考慮し、実際に出た利益を計算します。先程の例では、1年間に800万円の利益が出たとしても、年間支出が400万円かかっているならば、実質利回りは5%と言うことになります。

{(年間の利益)800万円-(年間支出)400万円}÷(費用)8,000万円=(実質利回り)5%

なお、実質の利回りを計算するにはある程度の知識と経験が必要になります。初めてのアパート経営で、実質年間どのくらい稼げるのかを計算したい人は、アパート経営について知識のある人に相談した方がよいでしょう。

・想定利回り

想定利回りとは、満室経営を想定した利回りの出し方で、計算式は表面利回りと同じです。

理想的な入居率ですが、この数値だけを見て利回りを計算してしまうと、実際には満室にならなかったり、自然災害などで修繕費用がかさむリスクもあることを考慮しましょう。

 

■アパート経営の平均的な利回りはどのくらい?

アパートを経営する際の平均的な利回りは、東京の都心では表面利回りが4〜6%、地方の大都市で7〜8%、地方の郊外で8〜9%程度ですが、景気や土地柄によっても異なってきます。人気の高いエリアほど利回りは低くなり、東京都の港区・品川区・目黒区・大田区の4区で構成される城南エリアの利回りは4.3~4.8%とも言われています。

 

都心の方が利回りが低くなるのは、物件の購入価格がそれだけ高額になるからです。一見田舎の方がよさそうに見えますが、そうとも限りません。

地方は都心より広告費が高くなる傾向があります。また、地方は家賃の相場が安く、従って最初に預かる敷金も安くなります。しかし、入居者が入れ換わる際の清掃や改装費用の金額は都会でも地方でも変わりません。よって、最初に預かった敷金だけでは賄うことができず、手出しが発生するケースがあります。

 また、地方都市で、大企業やマンモス大学があることから入居者が多い地域については、将来的には企業や大学の閉鎖・移転のリスクも考慮する必要があります。

アパート経営において利回りを計算される際は、ご自身がお持ちの土地周辺の平均的な利回りがどの程度なのかを調べ、地域特性を良く踏まえてから検討されることをお勧めします。

 

 ■まとめ

アパートを建てる前には、あらかじめ想定される住人を設定しすることが大切です。できあがったアパートのイメージを膨らませながら、様々な要素を検討していきましょう。

 

【監修者】

不動産コンサルタント 井筒 翼

高校卒業後、大手不動産企業で賃貸営業、主任、店長を経て、独立し2014年に北海道札幌市にてASTAGE株式会社を設立。代表取締役就任。現在は札幌市を中心に買取再販、管理、売買仲介、新築企画等を主に仕事をしています!