固定資産税の節税目的で土地活用をするにはどんな方法があるのか、オーナーの希望別にパターン化してみました。一般的なアパート・マンション経営の他に、固定資産税が高いとされる駐車場経営であっても節税できる場合があります。また、更地の個性資産税を安くする方法の有無についても検討します。
■土地の固定資産税の節約法を土地活用法別に解説
所有している土地の固定資産税を少しでも安くするための方法は、どんな土地活用を考えているかによって変わってきます。原則として、土地には建物を建てた方が固定資産税をお安くできます。しかし、「建物を建てる以外の活用方法も検討したい」「更地のままで固定資産税を安くする方法は?」といった、様々なニーズも想定した上で検討していきます。
【考えられる土地活用のパターン】
・節税のために建物を建てたい
・駐車場として土地活用したい
・それ以外の土地活用をしたい
・更地のまま固定資産税を安くしたい
■土地の固定資産税・都市計画税とは
(1)固定資産税
固定資産税とは、土地や住宅、店舗などの家屋、事業用の構築物・機械などを持っている人を対象に、その価格に応じて納める税金のことです。不動産の場合、固定資産税は地価が高いほど高額になり、また、原則として更地がもっとも税金が高く、住宅やアパート・マンションなどが建っている土地は固定資産税が安くなります。※ただし、農地や山林の場合、固定資産税はかなり割安になっています。
固定資産税の税額は全国一律で「課税標準額×1.4%」です。課税標準価格とは、簡単に言うと、土地の場合は実勢価格の6~7割程度、建物の場合は実勢価格の4~6割程度の額になります。
なお、土地の課税標準額が30万円未満の場合は、税金は課されないのが一般的です。
(2)都市計画税
また、市街地にある土地のほとんどでは、「都市計画税」もかかります。(※市街化調整区域にはかかりません)これは、道路や下水道といった施設の建設やメンテナンスなどの都市計画に使われる目的で納める税金です。固定資産税と同じく土地や家屋の価格に応じて課税されます。税額は地方自治体によって違いますが「課税標準額×最大0.3%」です。
以上から分かるように、固定資産税は、高額の土地の場合は毎年かなりの金額になります。標準課税価格が3,000万円とされた土地の固定資産税は年間42万円、都市計画税は9万円で、土地をただ持っているだけで毎年51万円が税金としてとられることになります。そのため、できるだけ固定資産税をおさえながらの土地活用を考える必要があります。
■パターン① 節税のために建物を建てる
土地の上に住宅が建っていれば、土地の固定資産税を最大6分の1にまで減額できます。広い土地の節税を考える場合、マンションやアパートなど、戸数が多い建物が有利になります。
※住宅用地の特例※
住宅用地の特例に関しては、「1戸あたり」という点がポイントです。つまり、マンションやアパートなど、1つの建物に多くの戸数が集まっている建物は、それだけ特例が適用される面積が増えるということです。
例えば、500平方メートルの土地に通常の一戸建てを建てる場合は、「小規模住宅用地」の特例は200平方メートル×1戸となり、200平方メートルについてのみ課税標準額が評価額の6分の1になります。残り部分については「一般住宅用地」の特例が適用され、評価額の3分の1になります。
しかし、500平方メートルの土地に5戸が入るアパートが建っていた場合は、「小規模住宅用地」の特例は200平方メートル×5戸となり、1000平方メートルの土地までは課税標準額が評価額の6分の1になります。今回の例ですと、持っている土地全ての評価額が6分の1になります。※ただし、特例の適用は建物の床面積の10倍が上限となります。
この特例は、1階が店舗、2階が住宅といったケースでも適用できます。土地の半分以上が居住用部分であれば、他の部分が庭や駐車場など他の用途で使われていても全ての土地に特例が適用できます。
■「土地に建物を建てれば固定資産税が6分の1になる」わけではない
固定資産税を安くする際の注意点として、土地に建物を建てれば「土地の固定資産税」の評価額は6分の1に減額となりますが、かわりに「建物の固定資産税」が課税されますので、トータルでは6分の1の減額とはならないことが挙げられます。建物の価値が高く、建物部分の固定資産税が、土地の固定資産税よりも高額になるケースであれば、建物を建てても思うほどの節税効果は得られないことになります。
建物を建てるメリットがあるかどうかは、建物の固定資産税が土地の固定資産税の3.2倍以上かどうかで判断できます。土地の固定資産税よりも建物の固定資産税の方が3.2倍以上であれば、建物を建てるよりも、更地のまま持っている方が、固定資産税が安くつくことになります。
もっとも、アパートやマンションを建てれば、入居者から継続的に家賃収入が得られるという大きなメリットが存在します。税金は、家賃収入から支払えばいいので、納税の負担感は軽減します。
また、アパート・マンション経営には、将来的に子や孫の世代に土地を引き継ぐ際に相続税を大きく減税できるという効果もあります。そのため、一般的に、使っていない土地活用の方法としてアパート・マンション経営が強くおすすめされています。特に都心や駅の近くなどのアクセスの良い場所に土地をお持ちの場合は、入居者が入りやすいため、失敗しにくく利点が多い方法です。
■建物建築の落とし穴~特定空き家にならないために~
住宅用地の特例により、住宅用建物を建てておくと大きく節税できるため、地方では使わない住宅を空き家のままにして保有しているオーナーが増えてきています。しかし、空き家はメンテナンスされずに放置されて倒壊の危険があることや、犯罪者が利用するおそれがあること、野生動物や有害昆虫などの巣になってしまうなど、数多くの問題を抱えています。
そのため、2016年5月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」という法律が施行されました。これは、年々増加していく空き家が周辺住民の生活環境に害を及ぼさないように、ケースによっては市町村が何らかの措置を講ずることができるように整備された法律です。
参考サイト「e-Gov 空家等対策の推進に関する特別措置法(https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=426AC1000000127)」
この法律において空き家とは、以下の状態にある不動産を指します。
(1)「建築物又はこれに附属する工作物」であること
(2)「居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)」
※国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除きます。
また、空き家の中でも、「特定空き家」という概念を新たに設けました。
(1)「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態」
(2)「著しく衛生上有害となるおそれのある状態」
(3)「適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態」
(4)「その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態」
上記のいずれかにあたる空き家が「特定空き家」となります。
土地の上に建てた建物が「特定空き家」にあたる状態のまま放置しておくと、特例の適用外となり、更地と同様に「課税標準額×1.4%」の税金が課せられます。そのため、現在は住居に使っていない建物であっても、きちんと維持管理を行い、特定空き家とみなされないようにしておく必要があります。借家としての需要が少なく、維持管理が難しい土地・建物のお持ちの場合は、割安でも売却を検討した方がよいケースもあります。
■パターン② 駐車場として土地活用したい
駐車場として土地を活用したい場合、そのままでは更地と同等の固定資産税と都市計画税がかかってしまいますが、工夫をすれば駐車場であっても節税をすることが可能です。
駐車場経営は建物を建てなくて済む分、初期コストを抑えられます。また、「日照を妨げるので建物は建てたくない」といったオーナーの希望に沿うこともできます。しかし、駐車場経営は固定資産税や都市計画税の割合が重く、利益の3分の1を税金として持って行かれるようなケースもあります。土地を駐車場にしたくても、住宅用地として減税されず、土地に家を建てる場合に比べ6倍もの税金がかかってしまうとなると、躊躇される方も多いことでしょう。
しかし、駐車場も特例を利用して減税する方法があります。それは、マンションやアパートなどの建物と、駐車場をつなげて使用すること。駐車場が住宅用の建物の敷地と一体となっており、土地全体の半分以上が居住用部分であれば、住宅用地とみなされ、評価額の最大6分の1の節税が可能になります。
また、駐車場をアスファルトにしておくと、将来相続が発生した時に、「事業の用に供されていた宅地等」の敷地と見なされ、相続税の軽減措置が受けられます。具体的には、200㎡までの土地について、の評価額を50%減額できる特例が適用可能になります。
土地活用として駐車場経営をお考えの方は、あわせてアパート・マンション経営をするとともに、敷地をアスファルトにしておくことで、最大限の節税効果を期待できます。
■パターン③ それ以外の土地活用をしたい
・農地として利用する
農地の固定資産税は大きく二つに分かれ、「一般農地」と「生産緑地」には、農地課税といって固定資産税が大きく減額される制度があります。市街化地域に存在する、あるいは今後10年以内に市街化する予定にある地域で、「一般市街化区域農地」および「特定市街化区域農地」とされているものに関しては、宅地並みに評価されます。
もっとも、農地は収益性が非常に低いことで知られています。土地活用として一定の収入や利益を上げたいと望んでいる方には、他の土地活用法が適しているでしょう。
・山林
山林の価値は低いとされているため、広大な土地でなければ、土地の課税標準額が30万円未満となるケースも少なくなく、この場合、固定資産税は課されません。そのため、山林の所有者で固定資産税を納めていない人は多くいます。相続の場合も相続税が発生しないケースも多いです。
■パターン④ 更地のまま固定資産税を安くできないか
現状、完全な更地のまま固定資産税を減税する方法はありませんが、今後の法制化の動きによっては、使っていない空き家を自主的に更地にすることで、固定資産税を宅地同様に軽減する措置をとる仕組みが導入されるかもしれません。
少子高齢化が進み、人気の高い都市部などの地域を除いて、長年放置されたままの空き家の問題が深刻化しています。先述しました「空家等対策の推進に関する特別措置法」の法案段階では、建物を自主的に撤去したオーナーには、住宅用地と同様に固定資産税を軽減する仕組みを導入することも盛り込まれていました。
いずれこのような制度が導入されれば、無理に建物を建てたり、土地活用を考えなくとも、高い固定資産税を節税できる日がやってくるかもしれません。
とはいえ、現状では住宅用建物を建てての土地活用が一番現実的な方法となっています。
■まとめ
より良き土地活用のためには、オーナーご自身が積極的に知識を集め、計画を練り、将来のことまで考えて土地活用を行うのが一番です。
しかし、土地や不動産の問題は様々な法律が絡み、決して素人にとってやさしい仕組みではありません。また、高額の資産をいかに運用していくかという、慎重さを要する問題でもあります。失敗すれば負債を抱え、任意整理や自己破産を検討することになるかもしれません。
ご自身の状況や希望に適した土地活用のためには、まずは土地活用に習熟した専門家に相談されることをお勧めします。疑問点や不安な点を一つ一つ解消していくことで、納得のいく土地活用をすることができるでしょう。
Build-Re(ビルドリ)では、所有している土地の活用を考えられている方のために、最適なプランをご提案。また、大手ハウスメーカーや不動産会社をご紹介するコンシェルジュサービスを行っています。土地活用のご相談は完全無料となっておりますので、お気軽にお問い合わせください。
監修者 : 不動産コンサルタント 井筒 翼
高校卒業後、大手不動産企業で賃貸営業、主任、店長を経て、独立し2014年に北海道札幌市にてASTAGE株式会社を設立。代表取締役就任。現在は札幌市を中心に買取再販、管理、売買仲介、新築企画等を主に仕事をしています!