不動産投資をお考えの方に、おさえておきたい5つのポイントをまとめました。
(1)リスク
(2)ワンルームマンションへの少額投資のメリット・デメリット
(3)不動産投資の成功率
(4)投資会社の選び方
(5)利回りの計算方法を概説します。
あわせて、投資家おすすめの本も紹介します。
【1】不動産投資のリスクについて知っておこう
不動産投資を始める際、最初に、投資をして失敗するリスクについて踏まえておきましょう。不動産投資を始めようとして調べてみると、メリットや長所ばかりが強調されているようで、かえって不安になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
不動産投資は数千万~億単位のお金を投じますから、慎重になるのが当然です。慎重さは投資家にとって大切な資質です。良いことだけではなく悪いこともあらかじめ想定し、不動産投資のリスクについて踏まえることで、トラブルを未然に回避しましょう。
【不動産投資のリスク】
・人口減少で、アパートやマンションの需要は減っていく傾向にある
日本は少子高齢化が進み、かつ、東京を中心とする首都圏に人口が集中しています。そのため、特に人気が高く、住み心地が評価されている都市部エリアを除いて、基本的には少しずつ入居者需要が低下していくと考えたほうが良いでしょう。
総務省の平成30年住宅・土地統計調査によれば、2018年10月1日現在の全国の空き家率は13.6%にもなり、そのうち賃貸用の住宅の空き家率は6.9%となっています。リーマンショックのあった2008年の7.2%よりは下がっていますが、基本的に空き家率は増加傾向にあります。
参考サイト
「総務省 平成30年住宅・土地統計調査 調査の結果(http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2018/tyousake.html)」
不動産投資は10年先、20年先を見据えた長期計画となります。そのため、アパートやマンションを建てる土地に継続した需要が見込めるかどうかは、これまでよりさらに慎重に判断する必要があります。
一方で、例えば外国人コミュニティの需要が見込める土地は人口減少による影響を受けにくく、不動産投資向けといえます。地域特性とターゲット設定の見極めが重要です。
新型コロナウイルスショックにより、都心は感染症の拡大リスクが高いことや、リモートワークがより一層普及すると考えられることから、今後は人口を分散できる地方住まいの良さも再評価される可能性があります。しかし、この流れには不確定要素が強いのも事実です。
不動産投資は株式投資のように、世界情勢の変化で短期間に極端な上げ下げが生じることはありません。しかし、長期計画となるため、不確定要素による需要減少のリスクがあることは踏まえておきましょう。
・家賃は下がっていく
アパート・マンションなどの不動産は、新築物件が一番家賃を高く設定できます。築年数が経過すると家賃を下げざるを得なくなります。また、入居者の需要が見込めるエリアはそれだけ同様の土地活用を考えるオーナーも多くなり、競争激化による価格競争で家賃が低下するリスクがあります。
・金利が上昇する可能性がある
不動産投資用のローンは変動金利制を採用しているケースが多いです。低金利の続く現在は、ローンの支払いをしやすい状況にありますが、今後、金利の上昇により負担が増加するリスクがあります。
・資金計画や確定申告について自分で理解する
不動産投資の際は利回りの計算のほかに、管理費用や修繕費用、税金についての計算が発生します。また、毎年確定申告をする必要があり、思った以上に煩雑で手間のかかる作業だと感じることでしょう。
税理士に相談することで、ある程度負担を軽減できますが、すべて他人任せにはできません。数字や計算が苦手という人でも、オーナーが自分で勉強し、理解して取り組む必要があります。
・自営する際のリスクについて
不動産投資の際は、基本的には管理を業者に委託することになります。しかし、オーナーが自分で管理することも可能です。比較的小さい物件で、管理費をカットして少しでも利益を上げたいと考えられるならば、自己管理に挑戦されるのもよいでしょう。
しかし、自営は掃除やメンテナンス、修繕のほかに、自然災害や住人間トラブルといった様々な問題にオーナー一人、または家族など数人で対応しなくてはなりません。オーナーの対応が遅れるなど、トラブル処理に問題があった場合は、住民の満足度が下がり、空室が生じるリスクが生じます。
また、家賃滞納が発生した場合は、督促や交渉なども自分で行わなくてはなりません。これらの対応は強いストレスとなりがちです。管理会社は管理のプロで独自のノウハウを持っているため、任せておいたほうがオーナーのストレスも少ないでしょう。また、住民満足度も高まり、入居者を逃がさない結果につながるかもしれません。
【2】少額の不動産投資ならワンルームがおすすめ?メリットとデメリット
ワンルームマンションは不動産投資の中でも比較的ハードルが低く、不動産投資の初心者におすすめといわれています。その理由は、投資額が比較的少額で済むから。ワンルームマンション経営のメリットとデメリットをご紹介します。
【ワンルームマンション投資のメリット】
・少額で投資可能
ワンルームマンションは1室から購入できます。また、入居者あたりの室内面積が小さいため、物件の購入価格が安く抑えられ、初期費用やローンの頭金などの自己資金の持ち出しが少なくて済みます。また、ローンの借入額も少なくて済むので、金融機関からお金を借りやすく、月々のローン返済負担も軽減できます。
ローンが少なくて済むということは、万が一の天災、社会情勢の変化などにより入居者が減って赤字経営になったとしても、任意整理や自己破産などの債務整理をするリスクが少ないということです。
借金が払いきれず、自己破産や任意整理をしても、人生をやり直すことはできます。しかし、債務整理は一定期間金融機関から借金ができなくなるなどのデメリットが発生します。加えて、自己破産の場合は大きな財産も没収されてしまうため、できるだけ避けたほうが良いでしょう。
また、室内面積が狭いワンルームマンションは管理費や修繕積立金が比較的安くなり、固定資産税や都市計画税も抑えられます。
・家賃の下落幅が小さい
ワンルームマンションはファミリータイプのマンションより家賃が安いですが、その代わり、不況になっても家賃が大きく下落することが少ないというメリットがあります。そのため、10年、20年先を見据えて長期計画を立てる際、将来の景気の良しあしに左右されずに見通しが立てやすくなります。
・ワンルームマンションは将来的な需要がある
少子高齢化、核家族化が進み、最近では夫婦であっても別々の家に住むことも珍しくなくなってきました。そのため、特に東京を中心とした都市部では、単身者向けマンションは今後も高い需要が見込めます。
一方で、東京23区などの地方自治体は単身者向けマンションを制限する方向にあり、供給は減っていく見込みです。その理由は、単身者は住民票をうつさないで生活するケースが多いので、住民税を支払ってくれないからです。
そのため、都心のワンルームマンションは今後も高い人気が続くと予想されます。
【ワンルームマンション投資のデメリット】
・家賃が安く利回りが低い
ファミリータイプに比べて家賃が低く、利回りはほかの不動産投資に比べて低いです。不動産投資の収入で生活できるほどの利益を得たいと思っている方には不向きです。
・入居期間が短い
単身者向けマンションは入居期間が短期で終わることも多く、そのたびに原状回復費用や入居者再募集などのコストと手間がかかります。
【3】不動産投資の成功率は10%って本当?
不動産投資の成功率は10%ともいわれていますが、これは具体的な根拠のある数字ではありません。また、オーナーがどの程度の目的を達成すれば「成功」とみなすかによっても、成功率は変わってきます。
・節税や生命保険の代わりに活用したい
不動産投資に節税効果や、生命保険の効果を期待する場合、ほとんどのケースで目的を達成することができ、成功率は80~90%といえます。
不動産投資にかかる費用は、確定申告の際に経費として計上することができます。
また、株式投資で大損をしても税務上のメリットはありませんが、不動産経営で赤字が出た場合、給与所得と損益通算を行うことができます。これにより、赤字が出た分だけ所得税や住民税を安くすることができます。
不動産投資はこのほかにも、将来、オーナーが死亡したときにかかってくる相続税を安く抑える効果や、家族に生前贈与をする際の贈与税を抑えられるなどのメリットがあり、税金を少しでも安くしたいという観点からは最適の投資方法となっています。
また、不動産投資でローンを組む際に、団体信用生命保険に入っておくことで、万一の死亡や障害などの事由が発生した場合、ローン返済が免除されます。しかも不動産は投資家の手元(ないし家族の元)に残るので、引き続き家賃収入は得られ、家族に対する生命保険の代わりとなります。
節税や生命保険の効果を目的とする場合、必ずしも大きな収益を上げる必要はなく、不動産収益が大赤字とならない限りは目的を達成したといえます。この観点で見れば不動産投資の成功率は非常に高いでしょう。
・不動産投資で副収入を得たい
本業があり、副業で月数万円ずつでも稼ぎたいと考える方の場合、不動産投資による収入を黒字化する必要があります。この成功率は50~60%程度といえます。十分な下調べや知識、専門家への相談などで成功率を高めることができます。
・不労所得で生活したい
不動産投資だけで生活していけるだけの年収を得たい場合、成功率のハードルは大きく上がります。このレベルの目標を達成したいと願う方の成功率が10%と言われているのかもしれません。
少子高齢化が進む日本では、入居者の需要が高い、条件の良い物件が少なくなっています。この状況下でこれから不動産投資だけで生きていくには、リサーチに時間をかけ、本などで十分な知識を学び、さらには社会の流れを読む判断力、頼れる人脈などが必要になってくるでしょう。やりがいを感じる人にはチャレンジする価値はありますが、かける時間や労力を思うと、もはや「不労」所得とは呼べないかもしれません。
【4】不動産投資会社の選び方~セミナーに足を運んでみる
不動産投資会社は、原則としては規模が大きく、実績が高い会社を選んだほうが良いでしよう。不動産という大きな資産に投資するにあたっては、できるだけ失敗のリスクを減らしたいものです。多くの成功実績を積み重ねることで、会社を成長させてきた上場会社であれば、信頼性が高いといえます。
ただし、それ以上に重要なのは「実際にその会社で投資してみた人の生の声」と「相性」です。会社の評判はネットでもリサーチできますが、口コミはある程度操作が可能です。できれば直接の知り合いから満足度の高い投資会社を紹介してもらったほうが良いでしょう。
また、どれほど評判の良い会社でも相性の良しあしはあるので、実際に複数の会社のセミナーに足を運んでみて、雰囲気や方針などが納得のいく会社を選ばれるとよいでしょう。以下に、東証一部上場の不動産投資会社をご紹介しますが、いずれも投資家のためのセミナーを開催しています。
【日本国内向け投資会社】
・FJネクスト
・グローバル・リンク・マネジメント
・プロパティエージェント
【アメリカ向け投資会社】
・オープンハウス
【5】不動産投資の利回りの計算方法
利回りとは、不動産投資にかけたお金に対して得られる利益を、1年間あたりの平均に直した割合のことです。大きく分けて「想定利回り」「表面利回り」「実質利回り」の3つの計算方法があります。計算というと難しく感じますが、実際は簡単に算出することができます。
・想定利回り
購入したアパートやマンションが全部満室という理想の形で運用し続けた場合の利回りです。
【計算式】全室の1年間の家賃収入÷物件価格×100
・表面利回り
実際の入居状況を踏まえて、管理費・修繕費や税金などの経費を考慮せずに算出した利回りです。グロス利回りとも呼ばれています。
【計算式】現在入居者がある部屋の1年間の家賃収入÷物件価格×100
・実質利回り
表面利回りからマンション管理・維持にかかった支出を差し引いた本当の利回りのことです。
【計算式】(現在入居者がある部屋の1年間の家賃収入-経費)÷物件価格×100
利回りの平均は、区分マンションの1室に投資した場合は新築で3%~4%前後、アパートやマンションに投資した場合は新築1棟で6%前後となっています。中古物件の場合は物件の価格が下がるため、利回りは2~3%程度高くなります。
また、高い需要を見込める都心は、土地の価格も高いため、利回りは地方よりも低くなります。
新築より中古が、都心より地方が利回りが高いという結果ですが、その分空き室リスクも高まるので、投資先は慎重に選ぶ必要があります。
不動産投資家がおすすめする人気の本2選
不動産投資で生活していけるほどの収入を稼ぐためには、しっかりとしたリサーチや勉強が必要になります。副収入程度の稼ぎでよい、という方も、投資家に定評のある、人気の高い本に目を通しておくとよいでしょう。
「高利回りアパート投資~まずはアパート一棟、買いなさい(石原博光)」/ SBクリエイティブ
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/asin/4797386398/mofmof04-22/
投資先として不動産を選ぶかどうか、区分マンションかアパートか、どの不動産に投資するべきかと迷っている方にお勧めです。融資を受ける方法や物件の管理方法など、初心者が知りたいことが書かれており、具体的なノウハウが役に立つとして、投資家の間で名著と評判が高い本です。
「初心者から経験者まですべての段階で差がつく!不動産投資 最強の教科書――投資家100人に聞いた!不動産投資をはじめる前に知りたかった100の疑問と答え」/東洋経済新報社
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本格的に不動産投資をする気になり、幅広く概説的な知識を学んでおきたい人におすすめの本です。不動産鑑定士で投資家である著者が年数をかけて丁寧に作りこんだ本で、初めてででもわかりやすい内容が評判となっています。
監修者 : 不動産コンサルタント 河田 祐希
大学卒業後、大手新聞社に勤める傍ら、不動産を買い進め、2017年独立、株式会社カワマングローバルを設立。代表取締役就任。現在は個人法人合わせ6棟62室、戸建2軒、シェアハウス30床の所有、運営をしております。 宅地建物取引士